
夕焼けと槍ヶ岳
山にも容姿がある。日本の山といえば富士山。その均整、なだらかで広大な裾野は、わが国を代表するにふさわしい豊かな美しさだ。対照的に荒々しさが人をひき付ける山もある。槍ケ岳(標高3180メートル)が鋭角に天を突き刺すかのような姿は、多くの登山家を魅了し、征服欲をかき立ててきた。

北アルプスに浮かぶ月と夜景に彩られた松本市街
〈撮影データ〉キヤノンEOS-1D MarkIII 70-200mmレンズ f5.6 13秒 ISO400
長野県松本市から槍ケ岳の特徴ある姿を探したが、厚い雲に覆われ、なかなか確認できない。高ボッチ高原へ場所を移した。松本市街を見下ろすようにそびえる北アルプスの山々の中、吹き流される雲のすき間に、小さく三角にとがった山がやっと確認できた。

沈む夕日を背景にシルエットで浮かび上がる槍ケ岳
〈撮影データ〉キヤノンEOS 5D MarkII 600mmレンズ f11 1/1000秒 ISO200 2Xエクステンダー使用
定点から見ると、太陽の沈む位置は前日に比べ、太陽1個分ほど移動したように見える。冬至の前には南よりに、夏至の前には北よりになる。秋のこの時期、夕日は沈む位置を南側に移す。
夕日と槍ケ岳がぴったりと重なる瞬間を求めて、地元のカメラマンたちが待ちかまえる。その撮影場所も、太陽の沈む位置に合わせ、前日に比べ数百メートルほど移動している。
今日はこのあたり-とあたりを付け、視界の開けた場所に陣取る。山の気候は変わりやすい。槍が雲の中だったり、太陽すら見えない日が続くこともある。幸い、撮影に臨んだ日は雲ひとつない最高の条件がそろった。

ゆらゆらと槍ケ岳に重なるように沈む満月
〈撮影データ〉キヤノンEOS 5D MarkII 800mmレンズ f8 1/15秒 ISO400 1・4Xエクステンダー使用
続いて月を狙う。月の沈む位置は、日によって大きく場所を変える。前日の撮影場所から数キロも移動しなければならないこともある。撮影場所の設定は計算と経験、そしてなにより勘が頼りだ。自分を信じてカメラを据える。
松本市街のきらめく夜景の上に満月がぽっかりと浮かんでいる。澄んだ大気に、はっきりと月の模様が見える。ゆっくり月が沈んでいく。次第に明るさも弱まる。
空気のゆらぎで、模様がぼやけ始め、月の縁はゆらゆらと生き物のように波打って見えた。そのとき、とがった山のシルエットが月の表面に見事に重なっていく。ビンゴ!
ほんの数分の出来事だった。気持ちが高揚し、全身に身震いを覚えた。そう、まるで自身が山頂に立ったかのように。
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メモ
〈長野県松本市へのアクセス〉
・大阪から 大阪国際空港(伊丹空港)から飛行機で信州まつもと空港
・新大阪から 新幹線で名古屋、特急に乗り換えでJR松本


by masa19861124
空を見上げて